← 記事一覧へ
『それでいい』を読んで · 読後エッセイ

「切り替えが速い」は、褒め言葉だったのか――『それでいい。』と、あのカフェのこと

この記事には広告を含みます。

新規事業の部署が、急に解散した。

部署の解散と異動は突然だった。ただ、事業そのものがうまくいっていなかったので、会社の判断には「まあ、そりゃそうだよな」と納得していた。

むしろ悔しかったのは、会社に事業の継続を選ばせられなかったことだ。

それから間もない頃、その部署で一緒だった同僚とコーヒーを飲んだ。会社が入っているビルの1階にある、オープンカフェだった。

何を話したか、細かいところまでは覚えていない。

ただ、私はそのとき、目の前にある仕事のことばかり話していたらしい。相手から「切り替えが速い」と言われた。

「どういう意味で言ったんだろう」

少し考えたけれど、「まいっか」で終わった。

今思い返すと、相手は部署の解散について、批判めいたことを口にしていた気がする。突然のことだったのだから、納得できない部分があってもおかしくない。

私には、会社の決め方へのわだかまりはまったくなかった。事業を続けられなかった悔しさはある。それでも、話題はもう目の前の仕事へ移っていたのだと思う。

欠点だと思っていたこと

こういうところは、昔から自分の欠点だと思っていた。

忘れっぽい。長く付き合った人との関係にも、あまりしがみつかない。以前の上司や先輩に久しぶりに誘われても、なかなか足が向かない。

「群れない」と言えば格好がつくけれど、実際には群れられないのだと思う。

薄情に見えるだろうか、と考えたこともある。

もちろん、大切な友人は数人いる。その人たちとの関係まで、あっさり手放しているわけではない。

けれど、過去の関係や、その場にあった感情を長く抱えておくのは、あまり得意ではない。

忘れっぽさと、人間関係を引きずらないことが、同じ理由から来ているのかは分からない。ただ、自分の中では少し似た感覚がある。

前にあったことが薄れていくと、今、目の前にあることへ意識が向く。

その性質を「切り替えが速い」と言われたことは、あのカフェ以外にも何度かある。良い意味だったのかどうかは、今でも分からない。

でも最近は、前へ進む力として受け取っている。

古い付き合いに助けられることもある。一方で、以前の関係を守ることが、次に進む足かせになるときもあるからだ。

今なら、どう受け取るだろう

細川貂々さんと水島広子さんの『それでいい。』を読んだとき、何を考えたかは、正直あまり覚えていない。

今、本が扱う「自分を認めること」や「人との関わり方」を思い返すと、あのカフェでの会話が浮かぶ。

あの日の私は、言われた言葉の真意を、あとから何度も考えることもできた。

けれど実際には、目の前の仕事の話をして、「まいっか」で終わった。

ただ、そのときの自分の反応まで、欠点として決めつけなくていいのかもしれない。

大切な人は大切にする。離れていく関係まで、無理につなぎ止めない。そして、目の前のことをやる。

忘れっぽくて、群れられなくて、時々ずいぶんあっさりしている。

それでも私は、そうやって前へ進んできた。

この記事で扱った本