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『蟹工船・党生活者』を読んで · 読書感想

遠い時代の、重い空気――小林多喜二『蟹工船』を読んで

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『蟹工船』は、名前をよく聞く作品だった。一度は読んでおきたいと思ったのが、手に取った理由の一つ。

もう一つは、自分が知らない時代の社会を、小説を通して見てみたかったからだ。現実にあった時代だと分かっていても、今の暮らしからは遠く、読む前にはなかなか想像できなかった。

知らない時代に入ってみる

読んで強く残ったのは、働く人たちが置かれた環境の過酷さだった。逃げ場の少ない場所で働き、ひとりの力では状況を変えられない。

個々の場面を正確に語れるほど、今は内容を覚えていない。それでも、そこから抜け出すことの難しさと、作品全体に漂う重い空気は残っている。

時代背景を知りたくて読んだはずなのに、読み終えて「当時のことが分かった」と簡単には言えなかった。

小説の中にしばらく身を置くことと、その時代を実際に生きることは違う。自分が想像できる範囲には限りがある。

筋書きより残ったもの

同じ文庫に収録された『党生活者』も読んだと思う。ただ、こちらの内容はほとんど覚えていない。2作を並べて比べられるほど、記憶は残っていない。

時間がたつと、筋書きより先に、本を読んでいたときの気分が戻ってくることがある。『蟹工船』については、まさにそうだ。

読んでいるあいだ、身近な日常から離れた場所に連れていかれたようだった。けれど、その世界が単なる空想ではないことが、読後にも重く残った。

知らない社会を見たいという興味だけで読み始めたが、気楽な見物で終わる作品ではなかった。

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