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『新訂 福翁自伝』を読んで · 読書感想・書評

幕末を別の場所から見る――福沢諭吉『新訂 福翁自伝』

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坂本龍馬をはじめ、幕末の志士たちが躍動する時代の本を続けて読んでいた頃、『福翁自伝』も手に取った。政治の行方を左右する出来事や、命を懸けた行動を描く物語に引き込まれていた時期だった。

福沢諭吉も同じ激動の時代を生きた人だ。ただ、この自伝から受けた印象は、志士を主人公にした本とは少し違う。政治の中心で動くのではなく、学び、自分の目で海外を見て、得たものを人に伝える。時代への向き合い方にも、いくつもの道があるのだと思った。

志士たちとは違う場所で

『福翁自伝』は、晩年の福沢が自分の生涯を語り、その記録に自ら手を加えてまとめた本だ。何十年も後から振り返っているのに、若い頃の発見や戸惑いが、本人の言葉として伝わってくる。

長崎や大阪で学び、江戸へ移り、アメリカやヨーロッパにも渡る。歴史上の変化を後から説明する文章ではなく、変化の途中にいた一人が、見たことや考えたことを話している。

自分の目で確かめる

福沢の姿勢で印象に残るのは、その時代の常識をそのまま受け入れず、自分で見て確かめようとするところだ。海外へ行ったという経歴の華やかさよりも、実際に見たものから日本を考え直す姿勢に惹かれた。

長く学んだオランダ語が、開港した横浜では役に立たない。そこで英語へ学びを切り替えるという出来事も、自伝に記されている。積み重ねた勉強が無駄になったように思えても、目の前の現実を見て、必要なものを学び直す。

本の中で得た知識と、現地で出会う現実は同じとは限らない。福沢はその違いから目をそらさず、考えを変える。その柔軟さと行動力は、海外の話だけにとどまらず、自伝全体に通じるもののように感じた。

学んだことを人へ渡す

さらに惹かれたのは、知ったことを自分だけのものにしなかったところだ。海外で見聞きし、考えたことを言葉にして広め、教育にも力を注ぐ。政治家になるのとは別の立場から、社会の変化に関わっていく。

もちろん、福沢の生き方を自分の生活と重ねて、「自分も同じようにしている」とは言えない。そんなことは恐れ多い。読んで残ったのは、自分への教訓というより、常識を疑って確かめ、学んだものを人へ渡した人物への感銘だ。

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