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『坊っちゃん』を読んで · 読後エッセイ・街歩き

漱石がここを歩いていたのか――『坊っちゃん』から街へ

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「へえ、ここにいたのか」

古地図と今の地図を見比べて、そんなことを考えながら街を歩く。傍から見れば、ひとりでにやにやしている少し怪しい人かもしれない。

でも、これが堪らなく楽しい。

もともとのきっかけは早稲田だった。以前、あの界隈をよく通っていた。夏目漱石が晩年を過ごした場所が近くにあると知ったとき、その存在が急に身近になった。

それまでの漱石は、教科書に載っている文豪だった。偉い人。昔の人。それくらい遠かった。

ところが、いつも通る道の近くに暮らしていたという。

その場所には、当時、ちょっとした解説板があったくらいだったと思う。そこから漱石に興味が向き、『坊っちゃん』を含め、何冊かまとめて読んだ。

小説を読んでいるのに、地図が気になる

『坊っちゃん』は話の勢いがあって、人物も分かりやすい。楽しく読んだ。

けれど僕の関心は、登場人物が何をしたかだけでは終わらない。明治の学校はどんな場所だったのか。道は。家は。町の雰囲気は。

漱石の作品に今も残る地名が出てくると、古地図を探したくなる。

今の道路と重ねてみる。この寺は昔からあったのだろうか。漱石もこの辺りを歩いたのだろうか。

確認できることと、想像でしかないことはある。それでも、知っている街に昔の時間が重なった瞬間、遠かった時代が少し近づく。

僕が歴史の中でも明治以降に惹かれるのは、そういう痕跡が多いからかもしれない。写真も地図もあり、いま立っている場所とつなげて考えられる。

久しぶりに訪ねてみたら

最近、漱石の住居跡にまた行った。

驚いた。以前は解説板がある程度だった場所に、立派な記念館が建っていた。

ずいぶん変わったなあ。

でも、あの場所が大切に残され、訪れる人がいることは嬉しかった。

本を読むだけで終わっていれば、たぶんこの驚きはなかった。

漱石が文章を書いていた場所は、今も東京の街の中にある。『坊っちゃん』の筋を追っていたはずが、いつの間にかそんな場所を探して歩いている。

僕にとっては、それも読書の続きなのだ。

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