暗いデパートに忍び込みたい――『デパートへ行こう!』を読んで
閉店後のデパートへ忍び込む。
照明は消え、昼間とはまるで違う顔になった売り場を、誰にも見つからないよう息を潜めて歩く。
『デパートへ行こう!』を読み始めたとき、私は思った。
「これ、大好きかもしれない」
物語より先に、自分の中に妙な嗜好を見つけてしまった。
デパートへの思い出は、ほとんどない
私は地方の出身で、幼い頃にはデパートというものをほとんど見たことがなかった。
だから、この物語に懐かしさを感じたわけではない。子どもの頃に家族と出かけた記憶がよみがえったわけでもない。
惹かれたのは、閉店後という時間だった。
昼間なら大勢の人が歩いている場所から、明かりと人の気配が消える。見慣れたはずの場所が、夜になるだけで別世界へ変わる。
本当はいてはいけない場所に身を潜める。見つかってはいけない。けれど、暗闇の向こうに何があるのか見てみたい。
怖い。それ以上に、ワクワクする。
どうやら私は、そういう設定に弱いらしい。
「また鉢合わせるのかいっ!」
物語には、それぞれ事情を抱えた人たちが登場する。
最初は別々に動いていたはずなのに、閉店後のデパートという限られた場所で、何度も偶然に遭遇する。
「また鉢合わせるのかいっ!」
読みながら、心の中で何度もツッコんだ。
さすがに偶然が重なりすぎではないか。そんなに都合よく会うものか。そう思うのに、次は誰と誰が出会うのかが気になって、ページをめくる手は止まらない。
少し前に読んだ『ドミノ』にも似ている。
別々に始まった話が、偶然の遭遇を繰り返しながら一つにつながっていく。現実なら「そんなことある?」で終わるところを、物語の勢いがそのまま連れていってしまう。
ツッコミどころはある。かなりある。
でも、面白い。
騒がしさの先に、温かさが残る
冒険のような楽しさだけで終わるのかと思えば、最後には、それまで別々に見えていた人たちがつながる。
そこで残ったのは、驚きよりも温かさだった。
閉店後のデパートという、どこか背徳感のある舞台から始まった物語が、最後には人の優しさへ着地する。その落差がよかったのだと思う。
実際にデパートへ忍び込めば、ただ怒られる。場合によっては、それでは済まない。
だから本の中でいい。
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デパートへ行こう!